今年の世相を表す漢字は、「偽」に決まった。
消費期限改ざんを含む偽装事件が相次いだからであろう。
「不二家」、「白い恋人」から始まって、「ミートホープ」、「赤福」、「吉兆」といった
大手メーカーから、名もない小さなメーカーまで、日本の食品業界への信頼は,
地に落ちた感じだ。もちろん、食品だけに限らない事ではあるが、
これでは、中国の段ボール風味の肉まんのことを笑っていられない。
結局、「何をやっても、もうけた方が勝ち」という間違った効率化社会と
なってしまった現代日本のおかしさが生んだ出来事なのだ。
捨てなければならないものを捨てきれなかったのは、やはりお金の問題であった。
でも、「消費期限」っていったい何なのだろう。
もちろん衛生法に基づいた科学的なものであり、生産者の高い倫理観に
支えられているものなのだろうが、昔は、食べられるか食べられないかなんて、
自分の目と、鼻と、ちょっとだけ食べて舌で判断していたはずだった。
いつから人間は、自分の五感を信頼せずに、印刷された日付を
信頼するようになってしまったのか。
それだけではない。
日付がごまかされても気づかないほど五感も鈍ってしまっている。
「三丁目の夕日」では、お母さんが臭いをかいで
「これはダメ、もったいないけど捨てて」と言って
六ちゃんに渡したシュークリームを、
六ちゃんが食べてしまって食あたりを起こす場面があった。
現代人は、直感的に今の時代がおかしくて、あの頃の時代に
「正しい何か」があったように感じているからこそ、
あの映画がはやるのかもしれない。
僕の家では、下に落ちた食べ物は、「パッ、パッとして食べなさい」と教えている。
「3秒以内なら、ばい菌が足を掛けていない」という3秒ルールを設けている家庭もあるそうだ。
「髪の毛1本くらい、さっとのけて食べても死にゃせんわい」
「キャベツに虫がついとるのは消毒してない証拠じゃ」
今の日本人は、たくましさとともに倫理観を捨ててしまった……。
まあ、そうは言っても消費期限の切れたものは、もったいないけど捨ててしまって、
売らないで欲しいのは正直なところである。
僕の靴もいよいよ捨てる時期がやってきた。
裏はつるつるで滑り止めが全くなくなり、かかとの部分はすり減るというより、
完全にすり切れている。すり切れた部分に「シューグ」というゴムを塗りつけて、
ごまかし、ごまかし、もう12年も履いてきた。
アキレス腱のあたりの布の部分は破れ、
土踏まずのあたりの横の部分には穴が空いている。中のクッションはほとんど効かず、
アスファルトの上を走るのにはもう適さない。
捨てようと思いつつ、まだ履けるからと捨てられないまま
「いつか、靴がどろどろになるような場所で最後に使ってから捨てよう」と
心に決めて、
靴箱の中に入れていた。