「カラスの行水」を見た。
そのカラスは、とても気持ちよさそうに足から人工の小川の中に入り、バチャバチャと
羽を動かしていた。
上手に羽を動かして、気持ちよさそうに全身に水をかけている。
水は頭の上から背中の方までまんべんなくカラスをぬらした。
そして、体全体が濡れきったら、カラスは軽々と岸辺に飛び上がり、そこでもまた
気持ちよさそうに、体を震わせて水を飛ばしたり、くちばしで毛繕いをしたりしていた。
いや、鳥だから羽繕いいというべきか……。
そういう行動を二度、三度繰り返しながら、カラスは満足した顔つきで大空に飛んでいった。
いや、顔つきは見えなかったが、全身で「気っ持ちい〜い〜」と言っていたのだ。
さすが西条。
ここの水は、人間どころか、カラスだって大満足だ。
僕はいいものを見た。
いつも何かいいことないかな、と考えながら歩いている僕の目が、
カラスに会わせてくれたのかもしれない。
果たして今の世の中で「カラスの行水」を
自分の目でじっくりと見たことのある人は、どれほどいるのだろうか。
多くの人が見たことがないくせに、
「入浴時間がきわめて短いこと」を「カラスの行水」と呼んでいる。
そして、カラスの行水を見たことがなくても、
「カラスの行水」という言葉を使っている。
あなたに伝えたいこと 10
〜 目 力 (めぢから) 〜